自粛ムードの中、3月21日のふるさととつながろうツアーは霊山町から川俣町に場所を移し、川俣町でそば打ち体験を通じ、住民と触れ合うことを目的に実施しました。京都府、滋賀県、兵庫県、三重県から避難・移住者そして福島の家族合わせて17名が参加されました。そば打ちは初めての参加者がほとんどで、皆、楽しみにしていた様子。バスの中の恒例の近況報告タイムではそば打ちへの思いも話される参加者の方も。開催が危ぶまれた中、自宅でこもりきりでストレス発散の目的や彼岸で墓参りを兼ねて帰省された参加者もおられました。とにかくこのような時だからこそ、前向きに楽しもうとバスの中では参加者の熱気で盛り上がっていました。
バスの窓からは、梅、木蓮、早咲きの桜などが咲いていて、ふるさとの春を身近に感じることができました。福島駅から50分。道場に着くと、早速、4つの班に分かれて川俣町そば研究会の先生の指導のもとそば打ちを始めました。そば粉をふるい、水を入れて、混ぜ合わせ、綿棒で伸ばして、適度な幅に切る、といった単純な作業ですが、それぞれの工程にコツがあります。先生の指導のもと、それぞれのペースで、楽しみながら、丁寧にそば作りに励みました。そば粉と水を混ぜて泥んこ遊びになってしまった子どもチーム。地元のそば打ち好きお祖父ちゃんと参加のこだわり親子チーム。物作り大好き家族水入らずチーム。調理師のお祖父ちゃんと初体験母子の混合チーム。あっという間に1時間が過ぎていきました。
できたそばは、熱々のたっぷりのお湯に入れて、さっと火を通します。水に晒して、汁に薬味のネギとわさびを入れて、川俣名物の軍鶏(シャモ)の切り身も一緒にいただきました。シャモは柔らかくて、ハムのような味で大人気でした。できたてのそばはチームにより幅もまちまちで見た目も違いましたが、味わってみると、そばの香りがほのかにしてどれもそれぞれ美味い。先生の打ったそばは店屋のそばのように滑らか。作り方はシンプルなのに、作りかた次第で味が変わるそばの奥深さを感じました。
食後は、川俣町そば研究会の活動内容や震災体験について伺いました。26年前にそば好きが集まり、結成。メンバーが月1に集まり技術向上のためにそば打ちをし、震災前までは、峠の森自然公園で土日祝日そば打ち体験を行なっていて数千人の参加者がいたそうですが、飯館から近いため、震災後は、人も集まらなくなり、現在は出張ベースでそば打ち体験会を開いているそうです。今回お世話になった先生方はそば検定の有段者。多くの方にそばの美味しさを味わってほしいと、休み返上で私たちを受け入れてくださったそうです。
町の現状については、「川俣町も頑張っているが、65歳以上が40パーセント超えて高齢化社会になっていて、中山間地では農業も大変。シャモが名産だが、12,3軒だけで生産しているためサイズ的には小規模。復興事業としてアンスリームという花を生産するようになったが、南の花なので暖房代がかかり生産性がそれほど上がっていない。最近、山が荒れ放題になり、阿武隈山系に大企業が復興対策として130メートル直系の大規模な風力発電の事業を行うという計画がある。そういうことも大切だとは思うが、環境破壊につながるのではないかと危惧している。今の町の現状を見ると、正直、これからの未来に明るいものがないと感じている。それでも、それなりのことをやるしかないと思って頑張っている。」と会長さんから伺いました。 避難区域である山木屋が避難解除になっても、帰還する人が4割ほど。4月から生徒が卒業してしまい小学校の休校がすることも伺い、高齢化、過疎化、町の再生、真の復興について皆で知恵を出しながら共に考える必要があると思いました。
在住者と避難移住者が共に過ごす時間は、互いの立場を理解し、思いを共有する時間でした。どこに暮らそうともふるさと福島に寄せる郷土愛は同じ。そこに分断はなく、互いを受け入れ励まし合う時間でした。 コロナウイルスの影響に伴う自粛ムードの中、リスクがありながらも私たちを受け入れ、福島流に私たちをもてなしてくださったそば研究会の方々。「避難していても福島のことを思い出してくれるのは嬉しい。どうか元気でやってください」と励ましの言葉をいただき、道場を後にしました。
その後は、福島市の観光スポットのアンナガーデンを訪れ、山の上から見える景色や異国情緒溢れる雰囲気を楽しみました。駅に着くまで、1日のツアーの感想をお聞きすると、皆さんがそば打ちを楽しまれたのがわかりました。今回のツアーでも良い出会いがあり、福島県民同士がかけがえのない時間を過ごすことができました。川俣町そば研究会の皆様、川俣町産業課の担当の方、ご協力ありがとうございました。
ご参加の皆様、次に会える日まで、どうかお元気で。また福島でお会いしましょう。
参加者の声
そば打ちは初めてで、切るときは難しかった。2人の先生(先生と避難者のお父様)のもと楽しく体験できた。来年度も参加したい。
そば打ち体験は切り方が難しかったけど自分で作ったそばは美味しかった。作った人によって味が違うことがわかった。
初めてのそば打ち体験は、奥が深い。川俣の震災後の大変さも知ることができてよかった。アンナガーデンも楽しかった。