「第7回ふるさととつながろうツアー」は冬の裏磐梯の自然体験をテーマに2021年2月13日から1泊2日の日程で実施いたしました。
私たちは13日昼過ぎに郡山駅前に集合し、貸切バスで猪苗代湖の土津神社に向かいました。バスの中では恒例の自己紹介&近況報告タイムがスタート。前回のツアーから2ヶ月。昨年からこのツアーを心待ちにくださっていた避難者の方が多く参加されました。昨年の夏に訪れた松原キャンプ場で自然体験ガイドをしてくださった土屋さん家族との出会いを楽しみにしながら、1時間があっという間に過ぎ、目的地の土津神社に到着しました。
土津神社での自然体験
土津神社は猪苗代湖を見渡せる高台に位置し、陸奥国会津藩初代藩主の保科正之公が御祭神として祀られています。保科正之公は會津藩主のときには民政に力を注ぎ、経済においては、産業の育成と振興に努め、教育においては、藩士の子弟教育に尽力し幕末まで続く文武両道の會津藩の基礎を築きました。また、江戸幕政に臨み信頼関係に基づく「文治政治」へと転換し徳川幕府の礎を築いた藩主としても知られています。
自らの埋葬地を猪苗代湖が一望できる磐梯山麓に決めていたことから二代藩主保科正経が正之公の遺言に従い社殿を造営したそうです。日光東照宮を模した壮麗な社殿は惜しくも戊辰戦争により多くが焼失してしまったそうです。その後戊辰戦争の敗戦により会津藩が廃藩となり斗南藩(青森県むつ市)に移封されると御神体も遷され明治4年(1871)に廃藩置県で斗南藩が廃藩になると会津人達は故郷である会津に戻り御神体は磐椅神社に祀られ、ようやく明治13年(1880)に社殿が再建され御神体も土津神社に遷されたそうです。
私たちは、神社に到着するや否や、宮司さんから土津神社についての歴史について説明を受けました。11月の会津のツアーに引き続き、会津の歴史を知る機会になり、興味深く拝聴しました。「こどもと出世の神さま」である土津神社は主祭神である保科正之公の事績から様々なご神徳があるということ。由緒ある神社に参拝できることがありがたいと思いました。
境内で自然体験開始。子どもたちは参道の脇をお借りしてのそり滑り。人工のすべり台とは違って100%天然のすべり台なので、急斜面でスピードは抜群。少しでもコントロールを誤ると途端に転倒して雪まみれ。初めはみんな転んでいましたが段々と上手くなり、最後はコントロールが上手くなって加速して滑ることができました。降ったばかりの雪は柔らかくそり遊びに最適で、滑ってはまた山道を登っての繰り返しであっという間に時間が過ぎて行きました。
子どもたちがそり遊びをしているかたわらで、力のある大人たちは敷地内に積まれた雪を掘ってかまくら作りを始めました。地元のボランティアの方が数日前に積んで固めてくれていた雪の塊をシャベルで掘って行きます。やってみると作業は「掘る」よりも「削る」に近く、穴の内側を突き崩して広げていくようなイメージです。削っては出た雪を外に出るかき出しての繰り返しで、これが思いの外、重労働。数人で交代しながら作業をして、最終的には大人3人が入れるぐらいの広さまで掘ることができました。
大人チームは境内をスノーシュー(カンジキ)を履いて探索。もちろん土屋さんのガイドで。柔らかく湿った雪の上でもスムーズに歩ける感覚がおもしろく感じられました。これに慣れるとブーツや長靴を履いて歩くよりも楽に思えました。歩いていると、雪の野ウサギの足跡を発見。坂道を登るのは少しハードでしたが、森林浴を浴びながら自然に触れとても癒されました。
かまくらチームはとうとうかまくらを完成。そり遊びの子どもたちもスノーシューの大人チームも一緒に、かまくらの中に順番に入りました。中に入ると雪の中なのに思いの外暖かく、ちょうどいい広さと相まって落ち着く空間でした。担当の方にろうそくであかりをつけてもらうと幻想的になり、とてもきれいでした。参加者からは「きれい」「素敵」の喜びの声。苦労の甲斐がありました。
天然のそり遊び、スノーシュー、かまくら作りなど参加者のほとんどが初めての経験でした。それぞれの居住地ではできない体験ができる福島の冬。大人も子どももふるさとの冬の楽しみを満喫することができました。
桧原湖での自然体験
翌日は、早めに起きて、夏に訪れた松原キャンプ場のオーナーが運営する桧原湖の釣り場を訪れました。夏に訪れた湖とは全く異なった景色。一面雪に覆われた湖はキラキラと輝き、とても美しく見えました。キャビンから釣り小屋まではスノーモービルに乗って移動。ジェットコースターに乗ったようにアップダウンしながら小屋まで向かい、その中で釣りに挑戦しました。今年は、氷が50センチくらいしか張ってないそうですが、地上から160センチほどの下まで糸を垂らして魚を捕まえました。餌をつけて釣り糸をちょんちょんとたたいて魚をおびき寄せます。集中力が必要とされる釣り。全員で20匹ほど捕まえ終了。子どもたちは、氷の上で雪合戦や雪遊びに夢中。西日本では滅多に見られない雪と遊べることが楽しくて仕方がない様子でした。
思わぬハプニング
私たちは、いつものツアーのように、ふるさとの再発見をして楽しい思い出を胸にツアーを終えることができるのだと思っていました。まるで2011年3月11日に当たり前の金曜日がやってくると思っていたように。
それが、今回のツアーは違っていました。ツアーの途中、私たちは泊まっていたホテルで福島県沖の地震に遭いました。携帯から流れる「地震です!地震です!」の警告。京都出身のスタッフは地震で飛び起きその後も寝れなかったとか。あの時を体験している参加者は問題なく一夜を過ごしました。
翌朝、バスの運転手さんやホテルの方など地域の方にも相談し、午前中は様子を見るためにプログラムは継続しました。裏磐梯は会津に近いため震度は5強。周りで被害もなかったようですが、東北新幹線が那須塩原〜盛岡まで翌日まで(後に10日間に変更)運行を見合わることになったとわかり、対策を考えました。まずは、郡山駅でなく那須塩原駅までバスに送っていただくことをバスの運転手さんに依頼。郡山駅近くでホテルを予約している方にはキャンセルしてもらい一緒にプログラム終了後に帰ることに。郡山に戻らなければならない参加者には車の手配。そしてプログラム終了後、すぐに那須塩原駅に向かって出発しました。
2時間の道のり。「那須塩原で多くの人が駆けつけてパニックになっていないか」など最悪のシナリオを想定していましたが、バスは混雑もなく駅に到着。6分後発車の新幹線に飛び乗る方。1時間後の新幹線を待って乗車する方。皆が無事に予定通りに居住地に帰ることができました。
ツアーの振り返り
この体験から、地震や災害はいつでも起こうるのだと痛感しました。起こった後の行動―情報収集や決断や行動―が鍵であること。今回は、震災を体験している参加者が知恵を出し合い皆で協力して行動できたことで難を乗り切り「結果オーライ」になったのだと思います。また、地元の人の揺るがず、動じず、淡々と生きる姿に励まされました。その動じない大らかさが何があっても乗り越える力なのだと実感しました。
思わぬ地震に見舞われたツアーでしたが、振り返れば、冬の裏磐梯の自然を楽しみ、地元の人のあたたかさに触れ、そして、避難者同士のつながりを深めることができた実りの多いツアーでした。
今回もふるさととつながろうツアーにご参加くださり、ありがとうございました。来月が今年度最後のツアーになります。皆様のご参加をお待ちしております。
最後に、私たちを温かく受け入れサポートしてくださった方々に感謝の言葉を述べたいと思います。土屋さん家族、郡山中央交通の乗務員さん、森のうたのスタッフの方々、ホテルの従業員の方々、皆様ありがとうございました。