郡山から南東に約10キロ。懐かしい故郷の風景を目にしながら、田んぼを通り、仁井田本家に到着しました。仁井田本家の創業は1711年(江戸中期)。金賓自然酒が代表銘柄。
社長自ら杜氏(とうじ)として酒造りの指揮をとり、社員全員がお酒造りのプロと発酵の達人を目指して、夏は田んぼ作り、冬は酒造りに取り組みます。
そんな酒蔵を福島県から東京以西に避難した参加者20名で訪問しました。まずは、ヨーグルトのような味わいの米と麹のみで作られた発酵食品「まいぐると」をいただきました。その後、社長のご挨拶、営業部長兼かぶとえび生育係担当の馬場様からお話を伺いました。
仁井田本家が目指しているのは、「日本の田んぼを守る酒造」になること。有機肥料も使わず、草取りは除草機、田車、かぶとえびのみを使用して、「日本の田んぼを守る」酒造を目指し実践しています。創業300年である平成22年度からは蔵の夢である自然米使用率100パーセントと純米100パーセントを達成しました。
「山が豊かで、きれいな川が流れ、元気な田畑が広がり、たくさんの生き物がいて、よい米や野菜がとれ、人が集う」そんな町作りのビジョンも持ちながら「田村町自然の里計画」を実行しています。
震災後は、思いも寄らなかった売り上げの落ち込みも経験しました。その落ち込みを解消するために、「何とか、蔵に来てもらおう」とイベントを開催。感謝祭、月に一度のスイーツディーや田植えから稲刈りまでを体験する「田んぼの学校」などのイベントを開催したことで、ロスをカバーしただけでなく、多くの仁井田ファンを増やすことに成功しました。
確かに震災で辛いこともあったけれど、販売促進会で多くの方々の熱い支援をいただいたことは決して忘れられないことだと馬場さんは振り返ります。
お話の後は、実際に酒蔵を見せていただきました。米を洗い、蒸し、乾かす「釜場」。お酒をつくる酛をつくる「酛場」。発酵の終了にもろみを詰め、絞る「槽場」。ここで清酒と酒粕ができます。麹の力で酒がボコボコと音を出して発酵している様が、多くの参加者にとり、特に興味深かったようです。
試食の時間には、仁井田本家で作られているお酒、発酵食品の甘酒、麹を原料に作られたチョコレートもいただきました。麹チョコの美味しさに子供たちも大喜び。お酒の試飲に大人は大喜び。楽しいひと時でした。
最後に、販売コーナーに立ち寄り、お酒、酒粕、麹チョコ、飴などのお土産を購入し、家庭でも気軽に使えるこだわりのみりんをお土産にいただいてから、仁井田本家を離れました。
福島県の酒蔵であるがゆえに、震災後はマイナスからのスタートであったのにも関わらず、ブレないビジョンをもち、原料と製法にこだわり、こだわり抜いて、自然酒100パーセントという最高水準の酒を作り上げて来られたこと。そして、酒蔵から、田んぼを守り、循環型の町作りを多くの人々を巻き込んで取り組んでいること。その前向きの姿勢に多くの参加者が元気づけられましたようでした。これからもふるさとで輝き続けていただきたいと思っています。