11月のふるさととつながろうツアーは、飯坂温泉の老舗旅館のナカムラヤ旅館を訪れ、5代女将のお話を伺いました。飯坂温泉は福島駅から飯坂電車に乗り20分で到着する福島市民馴染みの温泉。その温泉で、江戸、明治、大正、昭和時代と守り抜いてきた旅館は地震のため半壊。改修費が多額にかかることから再開は断念しようと思っていたところ、お客様から、「いつになったら開けるんだ」とお叱りを受けて、一気奮起して、旅館の再生に取り込んだとのことです。
震災直後は、避難区域の方に無料でお風呂を提供したり、炊き出しのお握り作りをしたりするなど震災の対応に追われていたエピソードもお聞きしました。大工の棟梁の協力で、崩壊した建物を改修してもらい、ガスも温泉も戻り、やっと復旧することができたそうです。
6年半を振り返ると、風評被害により、団体客や個人の宿泊者が少なくなっているけれど、なかなか難しい時代の中でも、「自分がいいからとやめられないから、残さなければならない気持ちでやっている」と女将さん。「人生は置かれた場所で咲きなさい」という言葉を信じこれまでやってこられたそうです。
館内にある調度品も年代物。100年—200年前にタイムスリップしたような趣のある旅館に佇んでいると、喧騒を忘れて静かに時が過ぎるのを感じました。
お客様はナカムラヤ旅館に魅了され、リピートするファンのお客様が多いそうです。それもそのはず、1日数組の宿泊者限定なので広々と利用することができるからです。源泉掛け流しの温泉で貸切利用ができることも人気の秘密です。
女将の熱のこもった話を聞いた後、館内を巡り、タイムスリップの旅を楽しみました。どこを見ても年代物の装飾品が飾られており、贅沢な空間だと感じました。
次に、これまで飯坂温泉の花柳界を支えてきました町田三味線屋さんを訪れました。そこで、三味線の先生に、三味線、津軽三味線、そして飯坂温泉の歴史についてもお聞きし、実際に津軽三味線を弾いていただきました。コードも書いていない弦を勘所で弾く三味線。力強い津軽三味線の音色に心が洗われました。この音色を聞きながら温泉でのんびりできるのは贅沢なことだと思ったほどです。
最後に、「花ももの湯」を訪れ、3種の源泉の湯にのんびり浸かりました。
福島市内にある地元の方に馴染みの飯坂温泉。ツアーを通じて、そこで温泉を守り抜こうとしている方々に出会いました。この出会いを通じてふるさとに更につながり続けることができるきっかけになっていただければと願っています。