活用しよう原発ADR
司法書士 林 一平
原発ADR(原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介手続き)とは、東京電力福島第1原子力発電所の事故( 以下、原発事故)によって受けた損害の賠償を請求するための方法の一つです。避難等による実費損害は、原発ADRを利用することが有効的です。
東京電力からの直接請求をもらったからそれ以上はもらえないと諦めている。自主避難で東京電力からの直接請求の対象にならなかっら仕方がないと考えている。そんなことは、ないでしょうか?原発ADRは各地でおこなれている裁判とは違い、裁判所へ行くなどの負担もなく、比較的容易に行えます。
原発事故当初は、原発A DRは、東京電力からの直接請求との関係や活用できる事案の範囲が分かりにくく、あまり活用されていませんでした。しかし、数年が経過し、多くの事例が積み重なってきたことから、有効に活用できることが分かっています。東京電力のHPにも和解事例が公開されていますが、どんな人にとってメリットがあるのかを少し、解説します。
今、最も有効と思われるのは、自主的避難対象区域といわれる強制避難区域以外の福島県内などのからの避難者です。避難による家財道具の購入費などの実費や二重生活に基づく生活費増加分( 月3 万円程度)、避難雑費( 子ども一人あたり1 万円~ 2 万円)が一定の時期( 平成2 7 年頃)まで支払いをされています。これらの金額は原発A D Rの申し立てをすれば、ほぼ確実にもらえる状況にあります。また、二重生活者が面会のための交通費や避難にり病状が悪化した際の治療費、一時的な就労が不能になった際の就労不能損害などが認められている事例があります。
自主的避難対象区域ではない、強制避難区域からの避難者でも、避難に関する費用が東京電力への直接請求を超える費用がかかっている場合や高齢者、障がい者を抱える家庭で特別や事情を有する場合など、東京電力からすでに費用をもらっていても特別な事情を抱えるケースでは、直接請求との差額分が認められています。
原発ADRの欠点としては、個別の事情によって判断がされますので、人によって認められる内容や金額が異なる事、これまでかかった費用を一定程度証明(裁判とは違い最低限の資料でOKです。)する必要があることです。また、精神的損害に関する慰謝料の請求や福島県外からの避難者から請求は、原発ADRでも損害が認められることが非常に厳しいです。(自己で自宅の除染を行った場合の費用など一部認められてケースもあります。)
原発ADRの事は、以外に知られておらず、申立てがすすんでいないのが現状です。何もしなければ、本来もらえるはずの金額をもらえず損をしてしまいます。上記については、一部紹介したに過ぎません。ご相談等には随時対応しておりますので、原発ADRの利用を考えてみて下さい。
プロフィール
事務所所在地 愛知県春日井市中央台6-7-1
2008年司法書士登録。東日本大震災発生直後より被災地での法律相談支援を行う。また、愛知県被災者支援センターと協力し、愛知県に避難した方々への支援も継続している。災害時には、避難所での法律相談を行うなどの活動をし、現地の司法書士が相談活動を行う際の体制づくりも随時行っている。NPO法人レスキューストックヤード幹事も務める。
2020年2月29日(土曜日)
交流会にてADR相談窓口を設置いたします。(予約制)