Beautiful World
新月の頃の話
京都の夏。いよいよ本格的な夏到来ですね。朝は鳴り響くような元気な蝉の声で目覚めます。日中はというと、真夏の太陽の日差しは眩しいほどギラギラしていますよね。午後、西日になっても気温が下がることもなく、そのまま月の出る頃を迎えるということが多くなる日々です。猛暑が続く間はきっとそんな感じではないでしょうか。
あまりの暑さにウンザリしてしまうこともありますが、太陽や月はいつも私たちを照らしてくれています。月の周期はおよそ29.5日で、新月から満月、また満月から新月になる期間というのは、その半分の約15日間ということになりますね。
今回はこのコラムを書いている7月の新月の頃の話です。新月の日に、私のラジオ番組にある絵本作家さんをゲストとしてお呼びしました。「つきがみえないよるでさえ」の作者、じぎりん星人さんです。面白いネーミングですよね。ですがこの名前からはとても想像がつかないような、本当に素敵な女性でした。
人は人生の中で大切な人をなくす、ということがあったりします。じぎりん星人さんの絵本にはそのような時の心に寄り添った、ホッと安心できるような、心温まるような言葉があふれていました。
人の死について彼女はこのように語ってください
ました。
「からだがなくなったとしても、存在のしかたが変わるだけで、むしろ大きく広がっていけるのではないかしら」。そして本には、以下のように綴られています。
「このほしのきまりから、ときはなたれたきみは、すべてのもののいちぶとなり、あらゆるばしょにそんざいしている」と。
だから、たとえいなくなってしまったとしても、歩くと付いてくるお月さまのように優しくそばにそっと寄り添っていたり、温かい大きな眼差しで見守ってくれているのかもしれないですよね。
時には地面に咲く可憐な花のように、時には木をそよそよと揺らす風のように、ふと目につくところに全てのものの一部となって、あらゆる場所に存在しているのかもしれないですね。
こんなふうに考えられたら悲しみもあるけれど、心は少し和らぐのではないかなと思ったりしました。だからこんな時には、「すこしこのままで、じめんにしっかりとあしをつけて、あるいてゆこう」と。
確かに、新月は目には見えない。でも「見えないけど、ある」。そう、あるのです。大切なものは目に見えない、そんなふうにも言いますよね。気づかないだけ、意識していないだけで私たちのすぐ近くには、実は大切なものがたくさん存在しているのかもしれませんね。
せっかくなので少し別の角度から新月の話をしたいと思います。新月は新しいことを始めるのに、良いとよく言われています。言い換えると、事始めであったり、何かこれをやりたい!と、心が動くことにフォーカスすると良いというのが、新月の日なんだと思います。やりたいことがわからない、見つからないという時は、新月の日に自分に問いかけてみるのもよいかもしれませんね。
月が輝く頃も、まだまだ暑いこれからの季節。ついつい冷たいものばかり飲んでしまいそうになります。身体の冷やしすぎにはご用心ですね。暑さ対策に工夫をしながら、今年の夏を楽しく朗らかに乗り越えたいですね。
サリー
ラジオパーソナリティ・朗読家・司会・ボイスレッスンコーチ
FMおとくに862 「サリーのコトバのチカラでグッドモーニング」担当