2019年12月27日 私たちは、いわき市で活動されているNPO法人ザピープルの「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」の拠点、四倉にあるコットン畑を訪れました。私たちの訪問に合わせて法人代表の吉田さん、その畑を管理している福島さんや織り手の永山さん、そして作業ボランティアの方々が集まり、交流することができました。
「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」とは
このプロジェクトは2012年春に始動。農家の後継者不足で農地を手放す人が増えていた中、震災が起こり、風評被害から農業を断念する生産者が多くなり、その傾向に拍車がかかりました。そこで、「食用ではなく、塩害にも強い綿を有機栽培で育て、収穫されるコットンを製品化・販売する一連の取り組みを通じて、地域に活気と仕事を生み出すこと」を目的にこのプロジェクトが始まりました。「福島から新しい農業と繊維産業を作り出す」という目標も掲げました。
1万坪の遊休農地・耕作放棄地を管理しているのは、移住してきた60歳まではサラリーマンの福島さん71歳。次の世代に農業を残すことが大切と感じ、農業を営んでいます。きれいな環境の中で、有機農業とオーガニックコットン作りを通じて、これからの子どもたちを守り、この広い農園がいわきの人が楽しめる場になればと願いながら、この場所を守ってきました。
持続可能なデザインを取り入れた拠点
到着後、まず、私たちは、吉田さんからその場所の説明を受けました。持続可能なデザインを取り入れ、プロジェクトの基地は独立電源を用いて、中には薪ストーブを設置していること。トイレはバイオトイレ。ビニールハウスは自分たちで作成。外には、露天風呂もあり、空を眺めながら気持ちよく入浴できそうでした。そして1万坪の畑。そこで作られている農作物は全て有機栽培。もちろんコットンもオーガニック。だから生産者にも消費者にも安全。このプロジェクトに関わっている皆が誇りを持って作物を育てていました。
農園の管理者の福島さんや織り手の永山さんの自己紹介の後、ランチ交流会になりました。ランチは、無農薬で育てられた野菜で作られたおかずでした。ソースカツも美味でした。心からのおもてなしに感動を覚えました。
綿摘みに挑戦
腹ごしらえの後は、畑に出て綿摘みに挑戦。まず、綿の綿摘みのやり方をまず習いました。それから、ペアになり、中身のつまった実を探します。9月から収穫できるコットン。寒さのためか実も縮こまるってるように見えました。その中からコットンを丁寧に取り出しました。その作業も慣れて来ると見つけるのも採取り出すのも早くなりました。
寒い中の作業なので途中、暖かい小屋で休憩を取りながら、綿摘みを続けました。次第におもしろくなり、ボランティアさんと共にあっという間に畑の綿を採り切ることができました。それを集めて、種を取り出し、コットンボールから糸を紡ぎます。
たくさん採れたように見えたコットンもそこから製品になると量が足りないため、製品のタオルは外国製のオーガニックコットンと合わせて作ります。出来上がったタオルはふかふかでいつも使いたくなる肌触りでした。他にも名刺入れやハンカチ、コットン人形など魅力的な製品が販売されていました。
コットンプロジェクトへの思い
手を休めている間に、吉田さんのプロジェクトに対する思いを聞くことができました。
「口に入れない食物だから、風評被害を避けられるので育てていると思うのです。そして、NDだから自信を持って、これまで続けてこられたのです。ここでは、もう(放射能のことは)言えなくなっている空気があります。農業を続けているのも、もう何も問題のないことのように、どちらかというと復興、復興とそちらにばかりに偏ってしまう空気感があるのです。でも、混乱した状況の中で、農家の人たちが悩んでいることを忘れてはいけないと思うのです。」
「―この福島から環境をいじめないことーつまり、化学肥料、殺虫剤や遺伝子組み換えのタネを使わないことー。私たちは、震災で学んだ学びを伝えていきたいと思うのです。そして、ここから未来を、望む形にしていきたいのです。」
流暢に流れるように言い放つ吉田さんの言葉は優しいけれど、とても力強くて、心にストレートに響きました。この地で地元に根付いた活動をされてきたからこそ生まれた郷土愛、そして、自然や多くの立場の違う人に対する慈しみを感じざるを得ませんでした。
ここはみんなのつながる場
「原発事故の後に、いわき市内で住むことになった人は、最初、いわきの住民と仲良くなれなかったんです。そこで、どうしたら仲良くなれるかを考えたのです。原発避難者の方が高齢の方々が多く、府営住宅に住むようになり孤立化が進んでいました。おじいちゃんたちはこもってしまって出て来ない。でも農作業は出て来る。富岡の人が一緒に年間を通じて農作業することでつながれたのです。5年続いているんですよ。おじいちゃんたちにもこの農園にとってもプラスになっているんです。」
「そして、ここには、避難者の方や住民だけでなく、他の地域から来るボランティアの方も来るのです。(今日は神奈川から)。ここでは、接点がない人同士がつながれるようになっている。つまり私たちがしているのは“つながり作り”なんですよね」と。
遊休農地・耕作放棄地の有効活用、福島から始まる新しい農業、環境に優しい循環型のライフスタイル、そして、震災の避難・移住者と地域住民のつながり作りや地域を超えたネットワーク作り。。。このプロジェクトの実績のスケール感にただ驚くばかり。
台風19号の被災者支援も
吉田さんの団体ってどのような団体なのでしょう。活動は震災前に遡ります。古着リサイクルやフードバンク海外支援活動からスタートし、震災後に、コットンプロジェクトが開始。そして、2019年10月に襲った台風19号でもその力を発揮。「夏井川のエリアで再度避難された方で被災されている人もいる。そんな人たちに力になれたら」そんな思いで、被災者支援にも関わり、古着の提供や床上浸水の被災者へ支援物資提供や救援などの活動も行なってきました。
参加された避難・移住者の中には、吉田さんの活動や台風の被災者支援に興味がある方もおられ、私たちは、一緒にできることを考え、できることを協力することにしてつながろうツアーを終えました。
大切なのは、、
「2度目の災害が来ると思っていなかったかもしれないけど、その時に、役立つのは、やはり人とのつながり」と吉田さん。吉田さんのお話の中でよく出て来た「つながりのおかげ」という言葉。何かを成し遂げる時に人の協力がいかに大切なのかを学びました。
「また手伝いに来てください」と福島さん。これが最後ではなく、スタート。「また来ます」と返す避難者の方もおられ、ふるさと福島との絆がまた深くなったことが嬉しく思いました。
コットンボールを探しにまた伺いたいです。今度は、草取りや土作りの時期にも伺えたら。いわきへの思いも強くなりました。
皆様へお願い
みんなの手では、台風被災者に向けた支援品(別紙参照)の他に、古着も募集しています。送料はみんなの手で負担いたしますのでご協力いただける方は、まず、みんなの手までご一報ください。