2021年8月14日、1泊2日の予定で、第2回 ふるさと とつながろうツアーを実施しました。今回は奥会津の山 村暮らし体験と題して、奥会津の只見を訪れて、水資源や ぶなの原生林について学ぶ内容でした。ツアーの実施日の数日前から、雨が降り、当日になって も雨は止まなかったので、内容を変更しながら、ツアーを 実施しました。郡山駅に集合して、バスで目的地まで向かいました。郡 山から約2時間半。バスに乗車している間、参加者の近況 報告の他に、各自が問題を出すあてっこゲームもしなが ら、移動時間も楽しく過ごしました。
ただみ・ブナと水のミュージアムへ
只見町に入り、まずは「ただみ・ブナと水のミュージア ム」へ。「ただみ・ブナと水のミュージアム」は2009年に 只見ブナセンターの附属施設として開館されました。ブ ナ林や自然の林や河川、野生の動植物を紹介し展示する だけでなく、地域の方や外部の方と只見の自然をつなぐ 場としての役割も果たしているそうです。施設内には、ブ ナ、森や動物の模型や昆虫標本が見れ、イワナやヤマメが 泳ぎ、鳥のさえずりも聞こえて、森の中を歩いているよう な感じでした。
ガイドをしていただいたのが、専門がオオカマキリの 研究員さん。まずは、只見のブナ林の分布について伺いま した。人手が入らなかった山奥に広がるブナの原生林と 人里近くにあるスギ人工林やコナラ、ブナなどの二次林 が広がっている只見の森林分布図を説明していただきま した。(二次林とは、伐採や山火事により原生林が破壊さ れた後に自然また は人為的に
再生し た林のこと)かつて薪炭林と して頻繁に伐採利 用されていたブナ は水分を吸いやす く、歪みやすいので 建材としては不向 きだとされて、建材 として価値のある スギが植林されて きたそうです。保湿 力のあるブナの価値が徐々に見直されて、森を保護するためには、木を活用 していくことが森が荒れ放題にならないように必要だと され、ブナの保護や利用に関しての捉えられ方が変わっ てきたのだそうです。私たちはブナにまつわる様々なお話を伺いました。ブ ナが木の実を好む動物から自ら実を守るために、豊作と 凶作を自ら繰り返し、動物を飢え死にさせて、種を守って いること。ブナの新芽を食べているルリクワガタやユキ グニコルリクワガタはブナがなくなると絶滅してしまう こと。雪崩により山肌が削られて岩が露出した雪食地形 の只見では、低木は雪崩に削られた斜面に育ち、谷筋に面 した斜面にブナ、トチノキ、サワグルミなどの落葉広葉樹 が茂っていること等。 私たちは、只見の自然豊かな環境の中で動植物が共存 しながら生息していることを知り、環境を守ることの大 切さを実感しました。特別にへびを触らせていただき皆 大喜びでした。
森林の分校ふざわへ
次に私たちは、宿泊場 所でもある「森林の分校 ふざわ」に向かいました。 森の分校が1982年に廃 校になり、1997年から宿 泊施設として利用されているそうです。宿泊場所の2階 は元教室。黒板に最後の卒業生が書いたメッセージがそ のまま残っていました。1部屋20畳もある広々とした教 室を2分割して、各家族ごとに分かれました。外は雨が降 り続いていましたが、荷物を置いてから、雨具を着用し て、校長先生の案内で、待望の「癒しの森」のトレッキング ツアーに出かけました。
癒しの森でトレッキング
癒しの森は、金山町と只見町の境界にある4キロのト レッキングコースです。森の入り口にはコナラ林、次に、 杉の植林になり、奥にはぶな林が広がります。私たちは 所々で足を止めて説明を伺いました。ねじれたブナや蔦 が絡んで形が変形したブナ、「青春広場」という名前の若 いブナの二次林も見ました。雨の雫がブナの木を伝って 流れている「ブナの涙」を見た時は感動を覚えました。ブナの木自体も水を保水するそうですが、ブナ林の土 壌も多くの雨を吸収し、土壌だけでなく森林全体として保水しているそうです。 “橅”=価値が無い木と されてその価値を認め られていなかったブナ がその価値を見直され て大切にされるように なったことが嬉しく思 いました。森の中の金山町と只見町の境界には、マザーツリーと して親しまれた樹齢250年のブナの巨大ツリーがある交 流広場がありました。2013年に巨大が倒れてから、太陽 の日差しが降り注ぐスポットができてオープンスペース になりました。只見ブナサミットの際には、世界中から多 くの参加者がそこに集まったそうです。約1時間半のトレッキングで、私たちは森からたくさ んのパワーをいただき、ココロもカラダもフルチャージ することができました。
縄よりにチャレンジ
トレッキングの後は入浴に近隣の温泉へ。夕食は、分校 に戻り只見のソウルフードのジンギスカンをいただきま した。食後は、花火や天体観測の予定でしたが、雨のために変 更。校長先生やスタッフの方の指導のもと、初めての縄よ り体験をしました。足の指にワラを挟み、2つのワラの束 を同時にねじります。ねじりと逆方向にからみ合わせる と、ワラの束はしっかりとからみあい縄になりました。 やってみるとコツが掴めるまで少し時間がかかりました が、慣れると自然に手が動くようにできるようになりました。縄を綯えるようになり、継ぎ 足しのやり方を習いました。コ ツは継ぎ足しをしていないかの ように行うこと。継ぎ足しができると縄をどこまでも長く綯うことができるようになり、綯えた縄を木のコースターの中に貼 り付けてコースターを作りました。いつしか縄よりに熱中し、時 間の経つのを忘れて没頭していました。楽しい夜の時間は足早に過ぎました。
田子倉ダムへ
翌日は曇りのち晴 れ。廃校を後にして、 田子倉ダムに向か い ま し た 。発 電 所 の 総出力が 380000KWの田子倉ダムは、日本では総貯 水容量順で全国3位の重力式コ ンクリートダムだそうです。 300万の人員と約348億円の費用がかけてできた総貯水量は5 億トンというビッグダム。イワ ナ、サクラマスの釣れる人造湖 としても有名だそうです。到着すると、145メートルの 巨大なコンクリートダムとダム により作られた田子倉湖が目の前に広がりました。そのスケールの大きさに驚きました。その後、田子倉ダム下流約3km離れた只見ダムに隣接 しているJパワーの只見展示館で水力発電の仕組みや種 類、ダムの水利用、只見川の流れと水力発電に関しての展 示を見て、ダムカードをいただきました。
ふるさと館田子倉へ
最後に「ふるさと館田子 倉」という施設を訪問しま した。「ふるさと館田子倉」 は、田子倉ダム建設により沈んだ田子倉集落の記憶 を後世に伝えることを目 的に、田子倉集落の歴史と 文化を伝える資料館でした。私たちは、ここで、只見川流 域の電源開発の歴史と人々の生活について学びました。只見川の電源開発の歴史は1910年(明治43年)に始ま ります。只見川は山あいにあり、流れが急で、雨や雪の量 も多く 水量が豊富なため、水力発電所建設の有力な候補 地でした。 昭和26年に、只見特定地域総合開発計画が定 められ、田子倉ダムと発電所は1951年(昭和
28年)に工 事着手し、1959年(昭和34年)一部運転開始、1961年(昭 和36年)に竣工しました。湖底に沈んだ集落は、マタギの集落で、住民はダムの建設に反対し、反対運動を起 こしましたが、首都圏や東 北地方に送る電力のため と建設されることになり ました。建設後、住民の生 活は一変。それまで、阿賀 野川や日本海まで繋がっ ていた只見川ですが、建設後はサケ・マスの遡上は見られ なくなり、木材を筏に組み流す輸送もできなくなり、集落 の文化は失われ、補償金を受け取った住民たちの生活は 変わりました。町はゴールドラッシュ景気になリました が、そのブームは水力発電から原始力発電へシフトして いったため、ダム建設が落ち着くと後退していきました。大規模なダム建設により経済が潤った裏では、生態系 や住民生活が犠牲にされて、涙を飲んだ人々がいたこと を忘れてはいけないと思いました。
10割そばを食す
帰り際に会津地方の名物 であるそばをいただきまし た。会津では珍しい在来種 の10割そばを舌鼓を打ち ながらいただきました。途 中、金山町大塩にある天然 炭酸水の井戸に立ち寄り、天然炭 酸水を味わいました。柑橘系の香 りがするような清涼感溢れる炭酸 水でした。
ツアーを振り返って
バスの中では、ツアーを振り 返って感想を述べ合いました。水 とブナのミュージアム見学、ブナ林のトレッキング、ジン ギスカン、廃校での宿泊、温泉入浴、ダム関連施設の見学 等、印象に残る場所は違っても多くが有意義な内容で あったという意見でした。中には、住民たちの犠牲の上に 水力発電開発が行われたことに心が痛んだと話す参加者 もいました。水力発電の歴史が、原発の歴史と重なり、便利さや経済 性を優先してしまうことで、自然や住民生活を犠牲にし てしまう社会構造があることに気付かされました。「犠牲 を伴わない電力をどう確保したらいいのか」という問いに、「大きなダム を作らずにこれ からは小水力発 電がいいので は」などの意見 も出て、話が盛 り上がりました。
只見町は、2014年に、ユネスコのエコパークとして指 定されたそうです。目的は「人間社会と自然環境の調和と 共生」の実現を掲げています。その目的を果たすために自 然環境や生物多様性の保護や保全、持続可能な環境や資 源の利用を通じ地域振興を図り、学術研究や人材育成な どを進めているそうです。保護を目的とされる世界遺産 と異なり、上手に自然や資源を活用して地域との共生を 図るというエコパークのゴールを達成し、森林の多い福 島県の先導的立場を担っていってほしいと思いました。
人口約4200人の村の46%が高齢者という高齢化が進 む只見町に、ブナの魅力に惹かれて移住されてこられた 森林の分校ふざわの校長先生夫婦、生態系の研究のため に只見に居住されているミュージアムの研究員の方々。 県外出身にも関わらず、只見の良さを知り地元に馴染み 貢献されている姿に感動しました。気軽にトレッキングが楽しめる「癒しの森」、沢の美し い「恵みの森」、町の総面積の94%が山林でブナの原生林 を始めとする手つかずの自然が残っている只見・南会津 地方。たくさんの自然のパワーをいただきました。自然を 満喫しにまた訪れたいと思います。
ご協力いただいた皆様ありがとうございました。