2021年7月24日 2021年度1回目のふるさととつながろうツアーを実施しました。今回は「歴史の潮流に学ぶツアー」と題して、相馬野馬追の歴史の旅を企画しました。あいにく、コロナ禍のため南相馬市の野馬追関連の行事が中止になったので、相馬市を拠点に活動する予定に変更して実施しました。 24日当日は朝8時半にいわき駅に集合。3月に参加されている方とは4ヶ月ぶりの再会です。1年ぶりに参加される方もいました。皆さんが再会を喜んでいる様子でした。バスの中では、恒例の自己紹介と近況報告をしていただきました。多くの方がコロナ禍で外出することが少なく、久しぶりの外出を楽しみにしているとのことでした。以前参加していた子どもたちも小学生から中学生に、中学生が高校生になっていて、背も高くなり成長していました。
相馬野馬追行列見学
いわき駅から相馬中村神社周辺までバスで1時間半で到着しました。バスから降りて沿道で神社を出陣した野馬追行列を待ち構えていました。すると、総大将、軍師、郷大将、侍大将、軍者などの役付の騎馬武者が馬に乗り勇ましく現れました。のぼりをたて、掛け声と共に、馬を上手に操りながら、騎馬武士が練り歩くその様は、豪華絢爛な戦国絵巻と言っても過言では無いほどの素晴らしいシーンでした。時に、馬が勇ましく駆け抜け、武者の凛々しい顔立ち、これから戦いが始まるかのような緊張感あふれる行列の様にタイムスリップしたような錯覚に陥りるほどでした。
行列の見学はあっという間でしたが、その勇ましい姿に、参加者が皆が感動して、いつかは、野馬追の騎馬戦を見てみたいとの声も上がりました。震災下もコロナ禍でも受け継がれていく相馬野馬追。継承している地域の人々の熱い思いに胸打たれ、これからも野馬追の歴史の火を灯すことなく守り続けてほしいと思いました。
松川浦へ
野馬追行列の興奮冷めやらぬ中、私たちはバスに乗り込み、松川浦に向かいました。向かった先は松川浦の尾浜人工磯場です。ここは、原釜海水浴場と隣接しており、海水浴もカニ釣りも楽しめる場所で昨年オープンしたそうです。到着後、早速、カニ釣りに挑戦しました。釣り糸に重しとイカReport 2021年度1回目のふるさととつながろうツアー
「歴史の潮流に学ぶツアー」を振り返っての切り身をつけて岩の中に糸を垂らして、餌でカニを誘き寄せ捕まえました。小さな赤ちゃんカニから、10センチ以上の大きなカニまで釣り上げました。
簡単そうで、難しいカニ釣り。釣れた数は個人差がありました。ポイントは、カニとの駆け引き、糸を引き上げるタイミング、網を使ってすくい上げるタイミングなのではないかとわかりました。あっという間の1時間。最後は捕まえたカニを海に戻し、カニ釣り終了。初めて挑戦したカニ釣りは思った以上におもしろく、参加者に大好評でした。気軽にカニ釣りができる磯場も気に入っていただけました。
カニ釣りの後に向かったのが、ホテルみなとやさん。尾浜人工磯場から数分。内海に面し、近くに船がたくさん停まっていました。そこで、地元の食材を使った美味しい海鮮ランチをいただき、ランチ後は、若女将さんに震災直後の話を伺いました。
震災時は、ズワイガニの解禁時期だったこともあり、多くのお客様が宿泊されていて、食事の用意をしている時に被災。ホテルが内海に面しているために、津波の被害は1階部分だけでしたが、水槽が壊れたことでしばらく生きていたカニは全滅したそうです。その後、2ヶ月ほどは地元の小学校に避難さ れ、休業されていたそうです。
営業再開後は、釣りに来られるお客様が訪れるようになりましたが、魚屋さんが職種を変更してしまい、カニを生簀で常時確保するのが難しくなり、さらには、以前のようにカニが手に入らなくなってしまったことから、冬にズワイガニを提供するができなくなったそうです。最近カニを提供する店も出てきたことから、数年のうちには再開したいと思っているそうです。若女将さんの熱い思いに打たれ、カニコースが再開したら個人的に訪れたいと話す参加者もいました。
復興ツアー
ランチの後は、相馬市のNPO法人野馬土の代表の三浦広志さんに相馬~浪江復興ツアーのガイドをしていきました。三浦さんは、南相馬市出身で、震災前は、井田川地区で農業を営んでいましたが、震災後、自宅が避難区域になり、東京に避難されていたそうです。現在は、NPO法人の代表以外にも、他の事業も手がけているということで、そのお話も伺いました。
三浦さんは、新地町・相馬市・南相馬市の3拠点を行き来して事業を進めているそうです。震災後に一家で移り住んだ新地町には、みさき未来という農業と電力を組み合わせた新電力会社の拠点を持ち、息子の草平さんが代表を務めているそうです。そこでは環境に優しい農業や養鶏も営んでいるそうです。相馬市では、浜通り農産物供給センターや農産物直売所と野馬土交流施設を運営。そして、震災前に農業を営んでいた南相馬市井田川地区では、トレーラーハウスの事務所を設置して、農地にメガソーラーを取り付け、ドローンを飛ばすための電波塔を立て、水田の再興を目指しています。三浦さんのお話は多岐に渡り、テンポのある話に参加者の多くが釘付けになりました。バスで通り過ぎる各所で丁寧に説明をいただきたくさんのことを教えていただきました。―震災当時の話。被害について。ご自身の避難生活のこと。ロボットテストフィールドの施設に関して。そこで実験されている内容に関して。原発や廃炉について。農家の失業対策について。避難区域の帰還の状況について。これまでされてきた行政交渉や省庁との交渉に関して。賠償について。風力や太陽光発電などの再生エネルギーに関して。オリンピック用に作られた水素ガス工場や浪江の酪農団地の話。新電力立ち上げに関して。今後のビジョンについて等―とても内容の濃い3時間でした。
松川浦から海岸線を走り、国道6号線を南下。相馬市から南相馬市へ。そして、希望の牧場、浪江の道の駅、双葉駅を通り過ぎ、北上。三浦さんの拠点の一つの南相馬市井戸川地区の太陽光パネルの設置された農地を訪問し、ガイドツアーは終了しました。
この10年間、三浦さんの成し遂げた功績を語り尽くすことはできませんが、復興予算を上手に使いながら、浜通りの農業の復興に尽力されていることや、未来のビジョンを持って取り組んでおられる姿が素晴らしいと思いました。農業の高齢化が進む中で、最先端の技術を使いながら、大規模農業経営や遠隔経営を導入することで、少人数で経営できる収益性の高い農業のモデリングを作り上げようとされている三浦さん。
三浦さんにとって復興とは。「何を持って復興というのかだけれど、会津の人や中通りの人は、元に戻れば復興かもしれない。でも浜通りは元に戻れないので、原発は少なくても100年はあるわけだし、人もいなくなっているわけだから。その中で、いる人が、新しくここにチャンスを見つけてくる人も含めて、ここで、いろんな実験ができて、楽しく生きていけるのが復興だと思っている。そして、人間が元気でいて、皆が豊かな生活ができること。その結果としてこの地域がどうなるのかということは、定型はないので、その人、その人が面白いことができていれば復興かと思う。少なくても僕は楽しくやっているので。何をやっていると聞かれたら、昔は、農業と言ってましたが、今は復興業ですと答えています。」そして、三浦さんの考える浜通りの姿は「農村がなくなってしまったから、違う物を作り上げて、人間が住みつつSDGs-(持続可能な発達目標)ができる空間を作っていくことが浜通りのテーマです」と。
三浦さんの目指す農業のモデリングが浜通りでできたら、全国にこのモデルを広めることで日本の農業は救えると確信されていました。これからも、そのバイタリティを持って農業をより発展していってほしいと思いますし、つながりながら何か協力できることがあれば連携していきたいと思いました。
今回のツアーを振り返って
コロナ禍で内容の変更を余儀なくされましたが、震災やコロナ禍を経て受け継がれる相馬野馬追に触れることができ、震災からの被害をバネに地域の復興に携われる事業家のガイドツアーから現在の浜通りの状況を知ることができました。
南相馬市の三浦さんの拠点からいわき駅まで戻る間、車内で、参加者の方が感想をお聞きしました。「野馬追行列見学で覚えた感動やカニ釣りのおもしろさを忘れてしまうほど、三浦さんからお聞きした内容が印象的で、復興に関して改めて考えされられるきっかけを与えてもらいました」「―百聞は一見にしかずーこれからも浜通りが再生していく姿を見続けていきたい」という参加者の感想で締め括られたツアーでした。
ご協力いただきました福島県の皆様ありがとうございました。