7月25日 2020年度初の「ふるさととつながろうツアー」を実施しました。今回は、NPO法人ピープルのオーガニックコットン畑の再訪といわきの海洋資源について学ぶツアーでした。いわき駅を出発して、四倉町にあるオーガニックコットン畑「天空の里山」にバスで向かいました。中型バスでは畑までの細い道を入っていくことができず、全員で山道を歩くことからスタート。15分後、やっと、畑に到着。主宰の吉田さん、畑担当の福島さん、ボランティアの方々の熱い歓迎で迎えてくださいました。
NPO法人ピープルは、いわきから古着の処分率を0にしようと、古着を回収してリサイクルする活動を行っていました。その夢が実現する前に東日本大震災が発生したことから、新プロジェクトを開始。原発事故の影響もあり農業をやめていく人たちが多い中、福島県の農業を盛り上げようとオーガニックコットン作りを開始しました。
コットン畑は、放棄された畑を集めた10,000ヘクタールの畑の中にあります。その畑を管理している福島さんは、「未来の子どもたちにきれいな環境を残そうと素人ながら」有機栽培にこだわり無農薬で野菜を栽培しています。そこには、吉田さんや福島さんの思いに共感した人たちー避難区域からの避難者の方、いわき在住の方、県外のボランティアの方々が集まる地域の拠点にもなっています。
昨年12月に訪れた時は綿摘みを体験させていただきましたが、今回は、綿の敵枝の作業をお手伝いしました。枝を切ることにより、綿の枝を増やすために行う重要な作業です。雑草取りも行いました。綿の根を傷つけないようにハサミで雑草を切り除去しました。
農作業の後は、綿の種取りや糸にする作業の体験、参加者同士、ピープルのスタッフやボランティアの方々との交流を深め、福島さんの自慢の獲れたてトマトやきゅうりもいただきました。獲れたての野菜は甘くて野菜の味をしっかり味わえる美味しい野菜であっという間になくなりました。その後、子どもたちは、外に出て、花に群がる蝶々を捕まえながら野と触れる時間を楽しでいました。約3時間程度の滞在でしたが、互いに交流を深めることもでき充実した時間を過ごせました。
ピープルの方々に見送られながら、次の目的地、いわき市久之浜の「及川造船所」に向かいました。及川さんも被災者。
津波で工場も型枠も流されたにもかかわらず記憶を辿り完成させ、2012年夏に工場を再開したそうです。小型船舶の製造に取り組み、震災後若手の社員の育成にも取り組み、福島の漁業を支えようと尽力しています。津波で壊れた船を作り復興にも貢献して来ました。
私たちは乗船名簿に名前を記入して、ライフジャケットを着込み、釣り船に乗船しました。入江の釣り人たちの盛大な見送りで船は出航しました。船の中では、四倉の魚屋さん手作りの「海の幸弁当」をいただきました。メヒカリ干物やカツオの醤油漬け、白身魚のフライなど魚づくしのお弁当。参加者皆でいわきの名物「メヒカリ」を感動しながらいただき、船内はワクワクムード。
沖に出て1時間余り、霧の中に浮かぶ広野の洋上風力発電の1基が目の前に現れました。経済産業省からの委託事業として福島の復興のシンボルとして注目された「福島浮体式ウインドファーム実証研究事業」。この実証研究事業は、2MW風力発電設備1基、7MW風力発電設備1基及び浮体式洋上サブステーションに加えて5MW風力発電設備で構成され、世界初となる浮体式洋上風力発電所を実現するために、安全性・信頼性・経済性を明らかにする目的で2011年〜18年に実施されました。2019年には実証研究の報告書もまとめらました。事業の1年の延長は認められたものの、今後はどうなるのかまだその計画は発表されていません。
最初に対面した2000KW風力発電設備「ふくしま未来」。太平洋の上に凛と立ち、羽を回し、人知れず電力を育んでいるその姿に言葉を失いました。船でゆっくりその周りをまわり停止。写真撮影。そして、少し離れた5000KW風力発電設備「ふくしま浜風」へ。浜風はその日は稼働してなく撮影のみ。稼働したり稼働したりを繰り返しているそうでした。両基に見える福島県と経産省のロゴ。今後の行き先が決まらずも稼働続ける2基。持続可能なエネルギーにかける当時の意気込みと期待を感じながらも不具合で移設を余儀なくされた7000KW風力発電設備1基。「復興」の期待を受けて始動したとされる県内の多くのプロジェクト。震災から10年を迎えようとしている今、復興のシンボルが福島にどれほどの意味があったのかをもう一度振り返る必要があるのではないかと感じました。
曇りのため沖合いから普通は見え福島第一原子力発電者を見ることはできませんでした。「少し波が荒いからしっかり捕まっていて」と言われ、船上の手すりにしっかり捕まり久の浜まで戻りました。
戻る道すがら、太平洋に眠る尊い命を思い祈りを捧げました。残された私たちができること、震災の教訓を日常の中に生かすことであったり、大切に日々を生きることであったり、伝え合うことであったり、共有して共感することだったり、私たちだからこそできることをしていくことが必要なのではないかと祈りの中で考えました。後に、曇りの中から太陽の光が差し込み、温かい光を感じ、あの日の荒れた海から想像もできない穏やかな海に戻りました。
久之浜に戻り、最後は子どもたちが楽しみにしていたアクアマリン福島でおなじみの「ふくしま海洋科学館」へ。昨年訪れた猪苗代湖にあったカワセミ水族館と姉妹の水族館は、「海を通して人と地球の未来を考える」理念のもとに、海・生命の進化の過程、ふくしまの川と沿岸や世界の海にいる海の生き物、シーラカンスまで、数多く展示されていました。多種類の生き物について知ることは興味深く、また訪れたいとの声もありました。
いわきの訪問は昨年からスタートして2年目3回目です。今回のツアーでは、いわきで活動されているNPOのコットンプロジェクトの再訪、被災を乗り越え再建した造船所の訪問、浮体式ウインドファーム実証研究事業である広野の洋上風力発電とふくしま海洋科学館の見学を行いました。今回のテーマのいわきの海洋資源に触れるだけでなく、震災が私たちにもたらした意味や復興について考えさせられたツアーでした。
震災を経て、個人、法人、行政、民間が取り組んできた復興の道のり。それがどのような結果であろうとも、それが、その時の最善だと選択して進んできた道であり、これからも私たちはきっとあの日の当たり前を取り戻すために進み続けていくのだと思います。ただ、私たちがあの時、どう感じて、どう動いたのか、どう生きようと思ったのかはいつまでも忘れていけないことなのだと思っています。
福島の至るところで感じる温かさや活力、そして県外に離れた避難・移住者たちと共に「ふるさと福島」の素晴らしさを感じ合えることを嬉しく思います。また、一緒に福島を再発見に行きましょう。