12月28日に開催したふるさととつながろうツアーでは、環境や味にこだわりを持ち物作りをしている生産者を訪ねました。
まず最初に消費者の目線に立ち、美味しい野菜を作り目指し、郡山ブランド野菜を立ちあがた鈴木農場さんを訪ねました。
郡山駅からバスで30分。私たちは鈴木さんと落ち合いそこから約15分。鈴木さんの案内で逢瀬にある畑を訪れ、郡山ブランド野菜について伺いました。
鈴木農場の歩み
郡山市は米の生産地です。歴史を遡ると、猪苗代湖の標高の高さを利用して、明治時代の先人が荒地に猪苗代湖の水を引いて、米の産地になった経緯がありました。少し前までは秋田の大潟村に次いで全国2位の米の生産地でした(町村合併で変わりました)。
鈴木光一さんは祖父の代から始まった米農家を引き継いだ3代目。お父さんの代までは米を中心に農業をしていましたが、日本人が米を食べなくなってきたこともあり、光一さんは野菜の直売所も始め自分で作った野菜も販売し始めました。
現在、米が6ヘクタール、野菜を4ヘクタールを生産しています。夫婦と両親、息子、研修生、従業員、農大の後輩たちが実習で手伝いに来てくれて、常時10人~12,3人で回しています。
野菜栽培で一番大切にしてるのは、お客さまが求めている「美味しさ」と「栄養価を重視した」野菜作りです。「生産者は農協や市場に出荷することが多いので消費者の顔が見えないことから工業製品のように作ればいいと考えがちですが、最後に食べてくれる人の顔が見える農業がいい」と思ったことが、直売所を始めたきっかけです。また、祖母の経営していた種苗店も引き継いで、お客さんには野菜の生産の仕方や肥料などに関してもアドバイスをしています。
大産地をめがけて作られる人気の種は作りやすいのですが、産地では連作することが多くなり、嫌地現象などの連作障害が出て来ます。結果、硬くて、美味しくはないものができてしまいます。そこで、鈴木農場では美味しさにこだわって、品種選びと栽培方法も考えて、30年程農業をしています。
SEED TO DISHES(一粒のタネからお皿まで)

コンセプトは「seed to dishes」。種も扱っているので、一つの種からお皿の上までが見通せるようなものな野菜作りをしています。栽培方法は、「植産栽培」です。作物は美味しい環境を作ってあげるように育てるのがいちばんだと思っています。人間も具合が悪くなって薬を飲むように、作物を見て、今何が欲しているのか見ながらそれに合わせて必要なものを与えていきます。農薬も必要な程度は使い、土には有機質のものをたくさん入れ、作物が根を張りやすい環境を整えながら、心を込めて作っています。
郡山ブランド野菜
種苗店を初めて郡山には美味しい野菜があるのがわかりました。その美味しいものを仲間と一緒に作り、郡山ブランドを立ち上げようと7年前に「郡山ブランド野菜」を立ち上げました。現在は33名まで仲間が増えました。味わい、栄養価、郡山の土地にあった品種を吟味して毎年200~300種類くらいから1年に1度1つずつ選び、種類を増やしてきました。例えば、「冬かんな」は静岡県でキャベツの種のみを作るブリーダー(種屋)が「日本で一番美味しいキャベツの種として生み出したものですが、「東北では出来ない」と言われました。ただ、寒い場所ではおいしいキャベツができるので、栽培方法を工夫して栽培に成功しました。
震災当時を振り返って(質問に答えて)
風評被害は震災直後はありました。爆発後、畑の上の放射線物資は取り除けませんでしたけれど、作物を作って測ってみたら影響が見あたりませんでした。
チェルノブイリは農地が痩せています。セシウムというのは、窒素・リン・カリウムのうちカリウムと同じ構造をしているので、カリウムがないと土がセシウムを吸ってしまうことになります。チェルノブイリではひまわりがセシウムを吸ったということはありましたが、チェルノブイリとは違っていました。
日本の畑にはカリウムがちゃんとあり、降ってきたセシウムは粘土鉱物が閉じ込め、土がセシウムを吸わないので作物に影響がないということがわかりました。昔から、「農業は土作りだから土を耕して肥やして土作りをしろ」と祖父から言われてきたことが関係しているのかと思いました。
ただ、やっぱり福島県産と他県産のキャベツがあったら、消費者は他県産のキャベツを買ってしまうのはわかるので「どうしたらいいか」と仲間と話しました。そこで、「キャベツで競争したら叶わないのでみんなが食べたくなるキャベツを作ろう」ということになり、ブランド野菜作りに拍車がかかりました。「冬かんな」を食べたい人は買ってくれて、キャベツとは競争は起こらないのです。そういう物を作っていくことがこれからの福島の農業かなと思ったのです。
今後の展望
私たちは、1粒のタネからお皿までというコンセプトでやっていますが、若い良いシェフたちが周りにたくさんいるので、彼らと一緒に、種からお料理まで見通せるように飲食も始めたいと思っています。農業は可能性があるけれど、なり手が少ないのも事実なので、興味のある若者も増やしたいと思っています。
私たちは、鈴木さんの流暢で熱い思いの溢れるお話を聞きながら畑から採ったばかりの「冬かんな」をいただきました。「こんな甘いキャベツを食べたことない」「塩をつけて食べたい」「美味しい」とその美味しさに感動しながらいただきました。
その後、鈴木農場の直売所に立ち寄り、色とりどりの野菜を買い求め、鈴木農場を後にしました。通販で野菜が売っていることも知り美味しい郡山ブランド野菜をお取り寄せしたいという声もありました。
いただいた「冬かんな」の余韻が口の中に残り、昼ごはんが待ち遠しくなりました。バスで10分ほど、郡山ブランド野菜を美味しくいただける「ベストテーブル」さんへ。2017年のツアーで訪れて参加者の方に大好評だった場所でした。
鈴木さんの野菜始め多くの郡山ブランド野菜を食することができるスペシャルなランチを皆でテラス席でいただきました。テラスには足コタツも用意されていて、暖かい席で新鮮なお野菜をいただきました。
郡山ブランド野菜たっぷりのサラダ。生産者さんの思いのつまった野菜を思う存分いただきながら、「福島プライド」を感じた時間でした。
次号に続く