8月16日と17日のふるさととつながろうツアーでは「災害に備え生きる力を学ぶツアー」というテー マで災害の備えについて学びました。1泊2日の日程で野外での防災キャンプと福島県庁内の「危機管理センター」訪問が主な内容でした。最低限度の宿泊準備と自宅にある非常用持ち出し袋と夕食のためにレトルト食品を持参ということで、お昼頃に福島駅には参加者がリックに思い思いの物を詰めて集合。バスで二本松市にある「あだたらフォレストパーク」へ向かいました。
そこに、福島市にあるNPO法人シャロームの役員さんが来られとれたてのきゅうりとお菓子を差し入れ てくださいました。シャロームさんとは、6年前のツアーでお会いしていることもあり久しぶりの再会でした。受付で防災キャンプ担当の遠藤さんに会い、重い荷物を担ぎながら、オリエンテーションのため森林学習館へ移動しました。そこで、2日間お世話になる講師の方と対面しました。自己紹介や開会の挨拶の後はチームに分かれてゲームをしてリラックス。いよいよのスタートにまだドキドキ。
次に、キャンプサイトへ移動。前日までの雨のせいか、木々の緑が鮮やかに映り、森のいい匂いに包まれ森林浴のシャワーが降り注いでいました。最初のプログラムは森での自然体験。森の注意点についてや焚き火に使える資材について伺ってから焚火の資材集めをしました。雨が降って濡れていると火がつかないので乾いている小枝を選ぶこと。注意深く見渡すと色の違いから使える物が次第に見つけられるようになりました。
必要な木々を集めた後は、テントの張り方を学びました。キャンプ初体験の参加者も多く、講師の方のデモンストレーションを熱心に見ながら1人でもしくは親子でテントを張りました。テントを張り終えると達成感でいっぱいになりました。親子で挑戦して自分も杭打ちができた子どもたちも自信がつきました。コロナ渦のこともあり、1家族で1テント。4-6人用のテントを1人もしくは2人で使えるので、テントの中は広くて居心地がよく、夜寝る時間が楽しみになりました。
次は夕食作りです。まずは火おこしからスタート。皆で集めてきた枝や松ぼっくりの他、牛乳パックと新聞紙も加えてチーム毎に協力しながら火起こし。スムーズに火起こしができたチームもあればなかなかつかないチームもあり、それぞれが工夫しながらやっと全チームで火起こしができました。そこに鍋をのせ味噌汁用のお湯を沸かしました。お湯が沸く間カセットコンロでご飯を炊く準備をします。計量カップがないので水の測り方を学び、鍋がない場合は袋に米を入れてお湯の中に入れて炊く方法や缶で炊くこともあることを学びました。(みんなの手の夕食会で袋一つでできる災害レシピを学んだばかりの参加者からは「知ってる!」「知ってる!」の声が!)
ご飯の火を強めから弱めにし少し置いてご飯を蒸して出来上がり!出来上がってから、持ってきたレトルトカレーをかけて、インスタント味噌汁をお湯に溶き、差し入れに頂いたみそきゅうりと一緒に皆でブルーシートの上で美味しくいただきました。バーベキューもいも煮もなく、炊きたてのご飯とレトルト食品だけの質素な夕食でしたが、自分たちが集めた資材で火を起こし、お湯を沸かし、ご飯を炊いて食べる夕食。学びを共にできる仲間と自然の中でいただけたことは最高でした。
食後は、災害キャンプ唯一の贅沢!施設内の温泉入浴でした。安達太良の湯は無色透明でヌルヌルの美肌の湯。それほど広くはありませんが露店風呂もあり薄明かりの中で入るお風呂。気の合う仲間たちと団欒しながらつかの間の幻想的で癒される時間を過ごしました。
入浴後は、また森林学習館に集まり、各自の非常用持ち出し袋の中身を互いにチェックし、必要な物は何かを一緒に考えました。複数のライトは必須。自分の服を使い枕にすること。火打式のライターや新聞が役立つグッズであること。アルミシートの下に新聞紙などを入れて身につけると温かいこと。緊急用の水よりも普段のペットボトルの水の方がおいしいこと。そして簡単にできる災害用トイレにの作り方など役立つことをたくさん伺いました。
その後、震災直後、フォレストパークが富岡町から避難された高齢者の方や妊婦さんの受け入れ先であったお話も伺いました。当時九州から送られたきた寝袋や炭と七輪。支援物資の中には簡単に使用できないものがあったことも。逆に下着やミルク等の必要とされる物はなかなか送られてこなかったそうです。混沌とした中で各地から訪れたボランティアの方々の活動により避難者の方が癒しの時間を持て、熊本のメーカーさんが支援で送ってくれたテントを森林学習館に張り、避難者がおうちのように過ごすことができたそうです。そしてそれぞれが隔離されて医務室や授乳室もできてプライバシーが守られたことも伺いました。 避難所生活では通常とは違った環境の中で過ごすことになるので快適に過ごせる工夫をすることや寝やすい環境を整えること(例えば、他の人の足音がしたり、明るかったりするので、耳栓をしたりアイマスクをする等)と非常用に音楽などの寛げるものや普段食べている物を揃えておくことなどのアドバイスもいただきました。火の通らない物ばかり食べていると舌の感覚がなくなってしまうそうなので、温かいものを口にすることが必要で卓上コンロさえあればそれが可能なことも伺いました。つまり、「キャンプスキルが災害時の避難所生活に役立つスキルなんだ」ということがやっとわかりました。
中身の濃い講義の後は、それぞれがテントに戻り就寝準備。テントは本当に快適でした。3センチの厚みのアルミシートの上に自分の服を集めて枕にしてゴロン。でも寝心地は最高!幸運にも曇りの一日中だったので快適な温度。朝は肌寒そうと思い寝袋を毛布がわりに。あっという間の1日。多くが早めに就寝。時間の経つのを惜しむように交流している参加者もいました。
キャンプ2日目。朝起きてから、身支度をして、テントを片付け、軽食をいただき、後片付け。森林学習館でお別れの会の後にフォレストパークを離れました。朝起きて偶然日本カモシカに遭遇した子どもたちは興奮気味。時間ギリギリまでクワガタと遊ぶ子どもたち。この豊かな自然溢れるキャンプ場に「また来よう」と口々に言いながらバスに乗り込みバスは北上。左手に山の景色を見ながら約1時間目的地の福島県庁に向かいました。
福島県庁に到着し「災害危機管理センター」を見学に訪れました。震災の教訓を基に作られた危機管理センターは震度7でも4位になるほどの免震構造の建物。緊急時には職員が30分で駆けつけて災害対応ができる体制になっており、プレススペースもありメディア対応も即可能。知事や各部の局長が集まって会議を行うマルチモニターのある災害対策本部会議室、国の機関や警察・消防・自衛隊の人たちが集まるリエゾンオフィスや緊急職員のための食糧を備蓄している備蓄倉庫などもあり素晴らしい施設でした。私たちは、危機対策本部の会議室に座り会議に臨む臨場感を味わいました。
次に会議室に移動して、福島第一原子力発電所の廃炉についての取り組みについてや台風19号の水害発生の話や避難について伺い避難計画作成の仕方についても教えてもらいました。廃炉の取り組みのお話では、汚染水対策、使用済燃料取り出し、燃料デブリ取り出し、廃棄物対策、そして福島県の安全監視体制に関して伺いました。現在、1500社の事業所の4000人の方々が世界初の廃炉作業に取り組んでいるそうです。特にデブリの取り出しには課題がありなかなかスムーズには進まないと伺いました。そのような状況の中で、県民の安全を確保しながら国と東電と調整をして作業が滞りなく行われるのかを見守っていく役割を担っている福島県の職員の方々。調整はなかなか大変かもしれませんが本当に頑張ってほしいと思いました。
最後に、最近増えている水害について、避難の重要性となぜ、どこに、いつ、誰と、何を持って、どのように避難するのか、my避難計画の立て方を教えていただきました。そして、配布された「そなえるふくしまノート」を参考にしながら「防災手帳」に必要事項を記入して災害に備えれることも知り、防災意識を更に高めることができました。
この2日間のツアーを通じ、避難した際に役立つ知識を得ることができて、避難所生活でも活かせるキャンプスキルを養い、避難計画の立て方や備え方のノウハウも学ぶことができました。福島県が次の災害に備えるために震災の教訓をもとにしながら危機管理センターを整備したことや原子力発電所の廃炉作業に関して課題と向き合いながら、県の未来のためにその任務をやり遂げようとしていることを知れたのも有意義でした。参加者の方からも災害に備える力を身につける役立つ内容だったことや自然豊かな福島で満足いくキャンプができたなどの喜びの声を多数いただきました。
学び多き盛りだくさんの内容のツアーをコロナ渦に実施するにあたり、関係者の方々のご理解とご協力いただき実現されたことにとても感謝しております。ご協力いただいた関係者の方々のお言葉や振る舞いの中に、震災を体験した故に培われた防災意識と命を尊ぶ意識を感じました。おかげで私たちは他では知り得ない知識と貴重な体験をすることができました。ご協力ありがとうございました。
参加者の方々にはこのツアーで得たことをぜひこれからの生活に生かしながら暮らしていただきたいと思います。そしてできれば自分の学んだことを知り合いの方に伝えていただき、皆の防災意識が高まれば幸いです。
―命を守り、命をつなぐことーそれは、311に始まり、私たちの旅はまだ終わっていませんー
また福島でお会いしましょう!