も〜ぉ い〜い かぁ〜い? 2
思えば遠くにきたもんだ
「住めば都」と申しますが、コロナ禍も含め、災害がこうも 身近になった昨今。「どこに住むか」を選ぶスキルは、まさに 人生を左右します。私の例ですと、1972年に「かつての日本 の首都」鎌倉で生れ、18歳の時、当時「世界一の環境立国」 と呼ばれていたニュージーランドへ5年間留学。1996年に 帰国して、1年ほど鎌倉でのほほんと実家暮らし。25歳でよ うやく実家を出て、魔都・東京で一人暮らしを開始。震災を きっかけに2012年に福島市へ、2017年には富岡町へと移 り住み、47歳でやっとカミさんと娘とそろっての暮らしが始 まりました。人からは「移住」と呼ばれますが、僕にとっては 公害や犯罪あふれる大都市から「避難」した感覚です。福島 から避難されている人の中には、気を悪くする方もおられる かもしれませんが、本当です。スズメがたくましく人家や電柱 に巣をつくってヒナを育てるように、僕も必死に安心して巣 作りを出来る場所を探したら、富岡へたどり着きました。元 東電社宅を町が借り上げて町営住宅にしている月4万5千 円で3DKの物件ですが、ここも10年で出ていかねばなりま せんので、終(つい)の住処を探す旅は続きます。
移住は闘いだ
震災当時の富岡町の人口は1万6千人弱。今でも1万2千 人余りの住民登録があり、町内人口は1700人超。さらに 1000人ほど、住民票は移していなくとも居住実態があると 推測されます。(富岡町調べ)カミさんは埼玉の大宮生まれ でして、夫婦そろって「よそ者」なわけですから、福島へ「移 住」した身として、地域になじむために、日々血のにじむよう な努力をしています。とにかく「知らないと損をする」官民さ まざまな支援情報にアンテナを張り、本やセミナーで勉強を して、実際に移住に関わる担当窓口やキーマンの元へ何度 も足を運んで関係を作ります。ハローワーク、生活就職応
援 センター、空き家バンク、地域おこし協力隊、ふるさと回帰支 援センター。このあたりはマストです。たとえ直接役に立たな くても、地域の家賃や給与の「相場」がわかったり、草の根の 子育てサービスや寄り合い所のチラシが手に入ったりしま す。探せば必ず、キラリと光るNPOが見つかります。地域の団 体をすべて網羅するくらいのリテラシーが望ましいです。ここ でダメならよそでもダメ。ここで大丈 夫なら、よそでも大丈夫。逃げてい い。負けていい。しかし守るべきは守 る。憎くても許した方が自由になれ ることもあり、許せないなら笑い飛ばした方が前へ進める。そう、移住は 闘いです。
地球が部屋、宇宙が庭
8月29日は僕の49歳の誕生日で した。7月に2年務めたホテルの仕事 をコロナ禍の給与削減で退職し、恥ずかしながら無職に。2 歳半になる娘・郷(きょう)を抱えて路頭に迷う所でしたが、 家族の時間をたっぷり持てた月でもありました。幸い9月か ら大熊町の新スポット「ほっと大熊」での仕事がみつかりま した。やりがいも給与も大幅アップ。手に職があれば道は開 けるものです。うちの両親は兄貴一家とオーストラリアのシド ニーに住んでいます。誕生日がてらオンラインで家族のリユ ニオン(絆固め)を楽しみました。シドニーではロックダウン で、自宅から5km以上離れると5000ドル(約40万円)の罰 金だそうです。「必ず福島へ行くわ」と74歳になった母が言 います。家族はみな海外に移住しましたが、生きていれば会 いにも行けます。死ぬまでに、宇宙へ行く機会があったら絶 対チャレンジしたいと思っています。宇宙空間の放射線量は 福島の比ではないですが、それでも宇宙から地球を眺めてみ たいですし、恒星や
星雲を、そして漆黒の闇をじかに感じて みたいと思います。人類にとって地球は部屋であり、宇宙は 庭です。今住んでいる住所は、でっかい「故郷」という家の部 屋の一つ。私たち
はみな、宇宙兄弟です。人は住みたい部屋 に住める時、幸せを見つけるのではないでしょうか。
参考リンク
福島で働く、移住きっかけマガジン「HOOK」鈴木亮インタビュー(2019年2月)
https://fukushima-hook.jp/interview_suzuki/ 復興系の移住者インタビューや求人情報を紹介するポータルサイトです
福島県12市町村移住支援センター
https://www.fipo.or.jp/ijyu/ 県外からの新規移住者への補助金、企業支援金など手厚い支援制度を補完する団 体が富岡町に新設。制度は使いにくいですが、一見の価値あり。
ふるさと回帰支援センター・メールマガジン(無料)
https://www.furusatokaiki.net/mailmagazine/ 日本最大の移住系認定NPO法人の無料メールマガジン。福島に限らず全国のセミナー 情報、移住支援情報、オンライン相談会など様々な通信が届きます。
地域への移住と関係人口のマッチング SMOUT(スマウト)
https://smout.jp/ 登録すると地域から声がかかる移住サイト。地域おこし協力隊のイベント情報も。
ふたば地域サポートセンター ふたすけ
所長 鈴木 亮
1972年 鎌倉市生まれ 福島県双葉郡富岡町在住